ソウル国際女性映画祭


穏やかなソウル

8月30日から9月1日、映画にめっぽう詳しい友人、でもあり同じ業界で戦ってきた仲間でもあるIさんと、渦中の韓国へ行ってきました。
最近の政治的な摩擦の影響で、さぞ少ないかと思っていたら、金浦空港行きの路線は満席。ソウルの街の雰囲気も極めて穏やかな感じでした。

8日間で、世界から女性をテーマにした映画が200本ほど集められていましたが、その中からスケジュールとテーマから選んで3本鑑賞してきました。

ソウル国際女性映画祭から3本

【映画について】
A French Women (Korea, 2019)

演劇の勉強のためにフランスに留学したものの、何かを成し遂げられた感覚もなく、フランス人の夫と離婚し、故郷の韓国に一時帰国した40代の女性の話。
美貌でもなく、才能でもなく、なにも特筆することのない、中年女性を主人公にして、その迷いや、おそらく後悔を含めて、等身大に描いている。女性が主人公というと、だいたいどんな作品も美貌だったり若さだったり、男性目線での女性を描くもの。ラストのシーンの解釈について、Iさんとやりとり。実は、この女性、パリのテロ事件ですでに死亡していたが、映画の描写はその死ぬ間際の回想ではないか、というもの。なるほど、と。
監督や出演者とのトークセッションも面白かったです。

Because we are girls(Canada, 2018)
ブリティッシュコロンビア州に移住したベンガル系の3姉妹の話。
子供時代に親戚から性的暴力を受け続けた3人が20年以上の沈黙を破って、その被害を訴える裁判を取り巻く、ドキュメンタリー作品。
女性蔑視、個人よりも家の名誉を重んじる文化背景から、両親も薄々気づきつつも放置してきたことを、3姉妹が、両親に助けて欲しかった、という当時の絶望感を語る。
被害を受けた女性たちになんの落ち度もないが、女性が悪いという社会のレッテル。
それとの戦い、苦しさ、一般的な「男性」目線の男性に伝わるだろうか。
映像美も素晴らしい作品。

Miss & Mrs. Cops(Korea, 2019)
コメディを見たい、と思い選んだ作品。
普通の容貌の中年女性は警察官。子供を育てながら、夫と3人でくらし、出世を夢見たが家族の世話におわれる。その義妹も同じく警察官で、刑事。男性社会の警察で、性暴力被害を訴えた女性の事件が葬り去られようとしたとき、二人で奮起し、加害者をぼこぼこにする話。街中をカーアクションを繰り広げたり、殴るけるなどのバイオレンスも満載。
これも女性が守られるのではなく、自ら体を張って、力づくでも守っていく、というのが新しい視点。バイオレンスについてはどうかと思いつつも、見ていて壮観。


国際イベントとして

女性映画祭は世界でいくつか行われていますが、韓国は国策として映画産業を支援していることもあり、このソウル国際女性映画祭は非常によく企画、運営されていると思いました。スタッフ(おそらく映画を学ぶ若い学生たち、ボランティア?)がニコニコと笑顔で、かつ的確に、もちろん英語にも対応できるという、外国人観客として気持ちよく滞在、鑑賞できました。日本ではなかなかそうはいかない、という友人I。韓国に学べることがたくさんあるのではと、思います。

昨今の日韓関係について

政治的な対立から、経済的にマイナスの影響がかなりでてきていると聞きます。
相手が悪いと一方的に詰るだけでは、進まない。というか進めたくないなら、それでもいいけれど、経済的に双方よしという関係に実利面から考えることで、まず緒を見出してもいいのではと思います。
政治、歴史的に違う見方があることは、前提として、そこをそれぞれの専門家、研究者が丁寧に分析し、意見をかわしていくこと、そういう姿勢が双方に薄れているのかなと思います。近いからこそ、丁寧な関係が必要。これは人間どうしだけでなく、国と国との関係でも当てはまると思います。


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