【読書】それは読書中毒 下半期編

2016年下半期に読んだ本を列挙してみました。
小説がほとんど。物語に没頭することで、気がかりなことから一瞬でも離れることができました。
小説がないと乗り切れなかった1年でした。


42冊目
浅田次郎『蒼穹の昴1〜4』講談社、2004年
ここのところよく良作品に巡り合う。
浅田次郎は、プリズンホテル以外、もっぱらJAL機内誌のエッセイで読むくらいでした。蒼穹の昴、清代末期の中国を舞台に見事なスペクタクルな物語。列挙国に食い尽くされる国の断末魔にも聴こえ、今の中国政府の態度の、背景とも読める。丹念に描き出される人物に、色や匂いもする。読んでよかった。

44冊目
シモーナ・スパラコ『誰も知らない私たちのこと』。
先に読んだ『素数たちの孤独』に続き、ラテン系の作品にヒットが続く。生殖医療とその選択に苦しむ人の話なのだが、言葉の選び方、葛藤する様が、言語の違いを超えて伝わる。今年のベスト10に入りそう。

45冊目
大沼保昭『「慰安婦問題」とはなんだったのかーメディア・NPO・政府の功罪』。国際法学者の著書だが学術書ではない。改めてこの問題に関する本を読み始めた。誰の立場に立つべきなのか、解決とはどういう政策なのか。思わず涙してしまった新書。
46冊目
グードルン・パウゼヴァング『片手の郵便配達人』。お友だちのおすすめ本。衝撃のラストに絶句。日本もこんなところに向かっているのではないかとふっと思う。読んでよかった、やっぱりベスト10に入りそう。
47冊目
青山潤『アフリカにょろり旅』。ウナギ研究者による、アフリカサバイバル、ではなくフィールドワークの記録。私もアフリカにいってみたいぞ。文章力がすばらしく、一気読み。
48冊目はかなりハードでした。
黒岩比佐子『パンとペン社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』講談社、2010年。
パンとペン。これは好きなことなど追い求めたいものをもつ人間にとって、ついてくる問題だと思う。
時の政府が抹殺しようとした社会主義思想。堺はペンを支えるためにパンを得る手段を創出した。時期を待つために、生き抜き思いを実現するために編み出した知恵といえる。知識階級であるものの、成功したエリートでもなかったという点が、共感というか、私のどこかに埋もれていた傷に指さされる感覚もあった。
作品中に膨大な固有名詞が登場し、かなり厄介な作品だけれど、読んでよかった。題材となった堺の生き様だけでなく、著者の黒岩氏にとってこれが死の直前の作品だったという点もある意味衝撃だった。研究者のように精密に調べあげ、丹念に練り上げられた文章は圧巻。まさに闘い。そう「闘い」という言葉を噛み締める。
49冊目 
村上春樹『村上さんのところ』新潮社、2015年
50冊目 

高田郁『あきない世傳金と銀 2』角川、2016年
51-53冊目 

福澤義三『侠飯 1,2,3』文春文庫、2014-2016年
54,55冊目 

重松清『峠うどん物語 上下』講談社、2015年
56冊目 

パオロ・ジョルダーノ『兵士たちの肉体』早川書房、2013年
この中でもっとも印象深かったのが56冊目。パオロは抜きん出ている若手作家と言えましょう。
57冊目
村上春樹『ラオスにいったい何があるというんですか?ー紀行文集』文藝春秋、2015年。
ああ私には旅が足りないのだ。
58冊目

アンドレイ・クルコフ『ペンギンの憂鬱』新潮社、2004年。
ウクライナ人のロシア語作家。村上春樹のタッチに似ているところもあり。よい作品です。アネクドートのような。
59-61冊目

浅田次郎『プリズンホテル2-4』集英社 、2001年
今は絶滅したと思われる仁侠の人々が繰り広げるドラマに思わず仁義切りゴッコを妄想してしまった。
62冊目

レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』早川書房、2014年
村上春樹の翻訳が光るハードボイルド

63冊目
ジェフ・ダイヤー『But beautiful』新潮社、2011年。
泣く子も黙る(?)村上春樹の訳がよくハマる。史実とフィクションのないまぜになった、ジャズミュージシャンの破綻ぶりに文学的な香りすら漂う。ジャズ好きはマストバイ。

64冊目
浅田次郎『珍妃の井戸』講談社、2005年。
清王朝の末期の物語。一つの時代が断末魔をあげながら終焉していく様子が悲しい。
65冊目
浅田次郎『鉄道員』集英社、1997年。
号泣。しかも通勤電車で。
66冊目

カルミネ・アバーテ『風の丘』新潮社、2015年。
故郷のイタリアを思い出します。なんて。。

67冊目

水井他編著『女性から描く世界史』勉誠出版社、2016年。
時々学術書。
コンタクトゾーンの女性たちについて特に興味深い。再読予定

68冊目から79冊目
池波正太郎『真田太平記1〜12』新潮社、1987年〜88年
ようやく読破。人名には悩まされましたが、生き生きと人物像が描き出される後半は一気に進みました。まるでそばで見ていたかのような描き方です。男性向けの週刊誌の連載ということで、ちょっとどうよ、と思う濡れ場が定期的に登場するのには苦笑。


80冊目
ダイナ・チャヴィアノ『ハバナ奇譚』武田ランダムハウスジャパン、2008年。
キューバは行ったことがない国の1つ。カストロ氏が死去したとのニュースを聞いてキューバに関する物語を読んでみたくなったのです。

81冊目から84冊目
山崎豊子『沈まぬ太陽1〜5』新潮社、2001年。
日航機の御巣鷹山墜落事故の背景、企業の内部、人物像に肉薄する。企業、というか巨大組織と利権、カネ、地位の血みどろの争いに背筋が寒くなった。著者の凄まじい取材量に圧倒的な筆力。読んでよかった本です。

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